「着姿の良し悪しに直結するんです」着付けのプロが大事にしているのは技術よりも…

2019.04.23

いま、美意識の高い女性たちのあいだで“古き良き、日本文化”が注目されている。なかでもおしゃれなひとたちが取り入れているのが「着物」。ヴィンテージショップでも取り扱われ、最近ではデニム素材の着物なども登場し人気を集めている。

そこで今回は、予約がとれない着付け講師として話題の着物家・伊藤仁美先生に、「着付けのとき、これだけは譲れない大事なこと」について話をうかがった。
浴衣にも使えるテクニックもあるから、今年の夏までにぜひモノにして。

プロが着付けのときに大事にしていること

今回、着付けについてお話をうかがう仁美先生は、京都 建仁寺塔頭両足院のご出身。祇園を拠点に活動したのちに、東京へ拠点を移し、現在では白金高輪にプライベートサロン「enso エンソウ」を開く、大人気の着物家。

そんな仁美先生、実は着物の道に入る以前の20代前半のころは「洋服」が大好きで、当時はあり余るほどたくさん買っていたそう。

それがお爺さまの法要の折、袈裟をまとったお坊さんを目にしたことをきっかけに、これまでのファッションスタイルから一転して和装を選ぶようになったのだとか。

袈裟やおじぎ(所作)の美しさ、そして、そのそぎ落とされた美しさ。なぜこんなにも美しいものに気づかなかったのか…と全身に電気が走ったんです。その出来ごとをきっかけに、「日本の美しさ」を広く伝えていきたいと強く思うようになり着物の道へ入りました。

コメント: 着物家 伊藤仁美先生

そんな仁美先生が、着付けの道に入り、師匠から言い伝えられ自身に受け継ぎ、現在に至るまで大事にしてきたことがあるのだとか。

着付けにはさまざまなテクニックがあります。もちろん基本的な知識や技術的なことも大事ではありますが、着付けしているときの姿(朗らかな表情で、想いは晴れやかに、姿勢は美しく)が、着姿の良し悪しに直結するんです。だからこそ、着付けのときの「顔」「想い」「姿勢」は何よりも大事にしています。

コメント: 着物家 伊藤仁美先生

誰でも意識するだけで取り入れられることだから、浴衣など簡単な着付けのさいにも参考にしたい。

まずは「浴衣」で練習したい、着付けのポイント

仁美先生の着付けに対する想いやテクニックを直に体感すべく、「神楽坂 発酵美人堂」で開かれた「着付け教室」にby.Sエディターが潜入。浴衣でも応用できるテクニックを、今回は「準備編」「着付け編」「帯編」に分けてご紹介。

- 準備編 -

出典: 編集部撮影

まずは準備。その日の気分や、季節に応じてお好みの着付け道具を取りそろえる。着付けに使用する道具は、事前に手が届くところに準備しておくと◎。床や届きにくい場所へ置いてしまうと、かがんだときに着崩れてしまうため要注意。

また、和装のさいに着用する下着は「スポーツブラ」おすすめ。一般的なワイヤー入りブラだと、帯に胸が乗っかって老けて見えてしまうそう。

そして長襦袢(ながじゅばん)に入れる襟芯は、表で入れてしまいがちだけれどシワの原因となるため、裏をこちらに向けて入れるのが正解。

- 着付け編 -

出典: 編集部撮影

女性の美しさを表現できる、長襦袢(ながじゅばん)の衣紋(えもん)は抜き方を変えることでまったく違った表情に変える。丸く抜いたらやわらかい印象に。ややとがらせて抜くとシャープな印象に仕上がる。

また、襟の開きは喉の下から1センチ下くらいまでにすると「きちんと感」を演出でき、3センチ下くらいするとラフに仕上がる。このとき、首の横に空間をつくると〇。

出典: 編集部撮影

▶ポイント
そして、衣紋が崩れない長襦袢の秘技。腰紐は重ねて結ぶのではなく、感覚を開けて二重にするのがコツ。

出典: 編集部撮影

結んだ腰ひもは上から下に入れ込むことで、帯をまいたときに上から飛び出てこなくて済む。

出典: 編集部撮影

長襦袢が仕上がったとき、上から下に向かってつぼまったラインになるのが美しい形。

出典: 編集部撮影

出典: 編集部撮影

▶ポイント
さらに、襟もとを絶対に崩さない裏技。ナースピンを半襟の縫い目に、もういっぽうの半襟の下に向かって差し込む。
首もとへの美意識はとても重要であるため、丁寧に行う。

出典: 編集部撮影

着物(浴衣)は背面に持って、膝を使って屈伸するようにして肩に乗せる(羽織る)。

出典: 編集部撮影

腰紐で結ぶ。このときも結んであまったほうの紐は下から上に入れ込む。

出典: 編集部撮影

▶ポイント
襟の対角線の背縫いを下に向かって引いてあげる。このとき、掛け衿の縫い目と背縫いが同じ位置になるように、上に向かって丈を調整する。

出典: 編集部撮影

ここで、いわゆる「おはしょり」を作る。ただし、おはしょりが短すぎる場合は写真のように、潔くおはしょりを作らないのが仁美先生流。

- 帯編 -

帯板は、丸いほうが下にくるように仕込むのが正解。帯板にゴムがついてるものは先に入れておくと〇。

そして、帯は表裏ともに使うことができるため、まず折るほうを決める。

出典: 編集部撮影

帯をまくさい、帯自体をぐるぐるとまわすのではなく自分がまわるようにするのがコツ。

出典: 編集部撮影

出典: 編集部撮影

出典: 編集部撮影

写真のようにリボン結びができたら、結び目の反対側でロックがかかるように帯の下を上に持ってくる。

出典: 編集部撮影

出典: 編集部撮影

こちらはオリジナルの帯結びで、ちょうちょ結びした後、長いほうの羽根をそれぞれの感性でアレンジし、仕上げていきます。

コメント: 着物家 伊藤仁美先生

息を吸って空間を作り一気に後ろにまわす。

出来上がったら、帯の上からハンドタオルを丸めて入れる。下から上に向かって傾斜に見えるようにするのがポイント。

出典: 編集部撮影

お教室の当日、先生が身に着けていたのが「男帯」。女性用とは異なり、うしろでリボンをつくらないため、楽にまけるのが魅力。こういった風に「男帯」をまくのも色っぽく仕上がり◎。

「着付け」は、“紐を上から下に入れる~” といったように、細かい部分にも意味があります。ちょっと失敗したとき、やり直さないで「まぁいっか」と着付けし続けてしまうのは絶対にNGです! 着姿の美しさはもちろん、着崩れの原因にもなるためです。

コメント: 着物家 伊藤仁美先生

ブーツ合わせでも、スニーカー合わせでもいい

出典: 伊藤仁美先生Instagram

仁美先生いわく、和装の着こなしはカーディガンなどの洋服を羽織ったり、ブーツやスニーカー合わせでカジュアルに着るのでも全く問題ないとのこと。

和装はハードルが高いように思われがちですが、礼節をわきまえるシーンでなければ(結婚式関連・華道・茶道・お呼ばれ…)、普段はなんでもありです。実際、私も子どもの保育園のお迎えに「着物×ブーツ」や「着物×スニーカー」で行きます(笑)

コメント: 着物家 伊藤仁美先生

最後に、どんな着物を着たらいいのかわからないから…と悩む方に仁美先生からアドバイス。

「和装」が似合わない日本人はいないと思います。似合うものを知らないだけ。はじめは、プロにどんな色のどんな柄の着物(や浴衣)が似合うのかアドバイスしてもらうのもいいでしょう。

これから海外の方も増えていきます。コミュニケーションツールとしても日本文化を伝えるといった側面でも「和装」は武器になると思います。それに、こんなにも美しい「和装」、せっかく日本人に生まれたなら着ないなんてもったいない! 若い世代の方に、そんな和装の魅力が浸透していくように願っています。

コメント: 着物家 伊藤仁美先生

これを機に、素敵な浴衣や着物をあつらえて、自分なりの和装を楽しんでみてはいかが。気分もしゃんとして、いつもと違った自分に出会えるはず。

取材協力/着物家 伊藤仁美

text : by.S編集部

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